2018/12/03 01:48
今回紹介する絵本は『ゆうかんなうしクランシー』。「他人とちがう」ということの意味や価値についてえがいた絵本です。
主人公の牛・クランシーは、両親や他の仲間の牛たちにはある白帯模様が生まれつきありません。そのため群れのみんなから仲間外れにされていました。そんなクランシーの活躍が、いがみ合っていた2種類の牛の群れの関係を変えていくというストーリーです。
この絵本は驚きなことに、作者であるラチ―・ヒュームが12歳の時につくったものだそうです。ラチ―・ヒュームは大人になって絵本作家になるということもなく、出版した絵本もこれ一冊のようですが、著者紹介に書かれている経歴がおもしろいので引用します。
(引用:本体帯) オーストラリアのヴィクトリア州にある農場に生まれる。馬に乗ったり、サッカーやテニスをしたり、ペットのメス牛ゼーナの世話をしたりしながら、少年時代を過ごし、12歳の時本書『ゆうかんなうしクランシー』を制作する。高校卒業後1年間。大工さんとして納屋作りや柵の修理をしたり、ブドウ園で働いたり、北部にあるアーネムの地域医療センターで働いたりして、様々な経験をする。現在はメルボルン大学で農業科学を勉強している。(引用終わり)
少し調べてみたところ、ラチ―・ヒュームは『どうぶつがいっぱい』などで知られる絵本作家のアリソン・レスターの子供だそうです(アリソン・レスターのサイト(英語))。
作者が12歳ということを抜きにしても、お話の内容も絵もとても良くできたおすすめの絵本です。一匹一匹丁寧に描かれた牛たちの姿からは、日々牛をよく観察していたのがよく分かります。プロレスしたり恋をしたり、アグレッシブな牛たちが魅力的。
表紙からも分かるように、とにかく牛たちが表情豊かで、マイノリティに生まれついてしまったクランシーの哀、いがみ合う牛たちの怒、種族を超えた恋に燃えるクランシーの喜、いがみ合っていた2種類の群れが仲良くなったことの楽、などが愉快に表現されています。
黒地に白い帯のような模様があるホワイトベルティッド・ギャラウェイ種と、茶色と白色模様のヘレフォード種という実際にいる牛をモデルにしていて、本の帯にも写真が載っています。ホワイトベルティッド・ギャラウェイ種は日本では珍しく、千葉県にあるマザー牧場でしか見ることができないようです(マザー牧場公式サイトの牛のページで写真を見ることができます)。
この絵本は、オーストラリアの児童文学賞Crichton Awardの新人賞を受賞、Children's Book of the Year Awardの受賞候補となりました。