2019/02/19 01:24



先日、高知県香美市にある「詩とメルヘン絵本館」の20周年記念の企画展「東君平「白と黒の世界」」を見に行ってきました。



東君平〈ひがしくんぺい〉(1940年 ~1986年)は、若くして亡くなった絵本作家・童話作家です。
今回の展示では、ニューヨークにいた抽象画の時代の作品から毎日新聞での「ひとくちどうわ」や詩とメルヘンでの連載まで、東君平のキャリア全体の流れを追える構成になっていました。本ではなく実際に作品を目の前にすると、切り絵の技術の高さや白黒の構成のバランスの良さが際立って感じられました。

詩人としての良さも実感。詩とメルヘン誌上で連載のリリカルな作風と毎日新聞の連載(「ひとくちどうわ」)のシンプルで物語性のある作風の微妙な使い分けも巧みです。

今回は、東君平の書くものがたりの良さを感じられる児童書を紹介します。
『トカゲになった日』は、東君平の死後、残されていた原稿を元に娘さんと編集者の手によって出版されたものです。絵は織茂恭子さんが手掛けています。

ストーリーは、主人公のぼくが亡くなったおじいちゃんの「毛虫は、見つけた人が、すぐつかまえること。」という教えを守って庭木の葉の裏にいた毛虫をとるところから始まります。毛虫に騙されそうになった主人公を助けてくれたトカゲに「トカゲになってみないか」と言われて驚くぼく。トカゲのしっぽを使ってトカゲになった僕は過去に戻れる石まわりという遊びをしますが…。

おじいちゃんとのやくそく、お母さんとのやくそく、やくそくをまもるぼくとやぶるぼくの微妙な心の動きが感じ取れます。52頁で挿絵も多いのでそんなに長い話ではないのですが、一本の映画を見たようなじわりとした感動がある話です。

個人的には、ぼくととかげが現在に戻るために夕日を追いかけて走る場面が印象的です。挿絵がブルーブラックと赤の二色刷りなので、真っ赤な夕日の色が鮮やかに描かれています。




東君平の仕事はくんぺい童話館のHPにもまとまっています。作品展示室には東君平の絵本デビュー作『びりびり』のアニメーションなどもあり、とても楽しめます。